エンジニアの代表的な雇用形態である「客先常駐」。しかしながらGoogleで「客先常駐」と検索すると、
- 「やばい」
- 「地獄」
- 「やめとけ」
といったネガティブな関連ワードが出て、客先常駐に対して否定的なイメージが植え付けられています。
私自身も過去に5年以上客先常駐のエンジニアとして働いていた身として、
「なぜ客先常駐がオススメされないのか」
について経験談を基にご説明いたします。
経験者が語る客先常駐エンジニア(SES)のリアル
私はエンジニアとして客先常駐を経験しましたが、結論から申し上げると客先常駐はオススメしません。
私は客先常駐の全てを否定するわけではありません。しかし、ITエンジニアまたはビジネスパーソンが成長するために客先常駐が望ましいかというと自信を持って「はい」とは言えません。
むしろ客先常駐を長年続けることによってどんどん自分の可能性が狭めてしまう恐れがあると思っています。
客先常駐をオススメしない具体的な理由についてこれからご説明いたします。
客先常駐をオススメできない5つの理由
①常に常駐先から「監視」されている(されている気になる)
客先常駐のエンジニアは当然顧客先のオフィスで仕事をすることになります。通常は顧客先の社員が目の届く範囲の中で仕事をさせられます。
そのため、常駐エンジニアが客先の社員から勤務態度や休憩の様子について注意されるシーンはしばしば見ました。成果が出せていないチームは特に注意を受けていた印象です。
私も常に監視される気分で仕事をしていたため、緊張感感じながら仕事をしていました。
②帰属意識が薄れる
帰属意識とは、「特定の集団や組織に属しているという意識」を指します。毎日客先のオフィスで働いていると自社との関わりがどうしても少なくなってしまいます。そのような状態で自分が自社の社員であるという意識を保つのは中々難しいです。
社会的に知名度が高く、ステータスのある企業であれば話は別かもしれませんが、多くの場合は帰属意識が薄れる一方です。
帰属意識が低くなると自社で開催されるイベント・会議に出席することが億劫になるようになります。
③キャリアアップが難しくなる可能性がある
客先での業務内容によりますが、一般的には客先常駐エンジニアは、顧客先企業からすると外部の人間であるため、コンサルタントや上級SEなどといった上流フェーズの仕事を引き受けていない限り、重要な部分や難易度が高い部分の仕事などを任せてもらえないことがあります。
特に二次請け以下の企業に勤めているエンジニアであれば、コーディングや設計作業などの比較的難易度の低い仕事しか任されないことが多いです。
若手であればまだいいですが、35歳以上でコーディングや設計作業などの下流工程の作業しか経験がないと、市場の評価も得られにくいです。そのような環境で仕事を続けていると年齢を重ねるごとにキャリアアップが難しくなってくるでしょう。
市場評価が上がらないと収入も上がりにくくなりため、負のループに陥ってしまうことが考えられます。
④顧客先の社員よりも早く退社しづらい
作業進捗が問題なければ別に顧客先の様子を伺うことなく退社することができますが、プロジェクト全体の進捗が思わしくないと、仮に早く帰ろうとすると、
「なんでまだ作業が遅れているのに帰るんだ?」
といった圧力を感じることがしばしばありました。
上記のように顧客先からストレートに言われることはめったにないですが、どうしても早く帰らないといけないときは顧客先に予め理由を伝えるか、逃げるようにオフィスを出ていくようにしていました。
⑤顧客先企業の勤務環境と比較してしまう
ITプロジェクトというのは遅延しない方が珍しいです。そのため、エンジニアは遅れをリカバリーするために残業や休日出勤をするケースを多く見てきました。
私も過去に17連勤した経験がありますし、同僚は会社で徹夜をしておりました。
(今は「働き方改革」が浸透し大問題かと思いますが。。)
そのような労務環境でしたので、顧客先企業の社員が早く帰ってたりアフターファイブを楽しむ姿を目の当たりにする一方で、自社の社員は遅くまで仕事をするという環境でした。
「顧客先は早く帰っているのになんで私はこんなところでこんなに働いているんだろう。。。」
常々そのようなことを嘆いておりました。
⑥プロジェクトが終了するとまたイチから学びなおさないといけない
客先常駐エンジニアはプログラミングや設計などのITスキルだけを磨けばよいわけではありません。
顧客先から評価されるポイントはITスキルよりも意外にも
「顧客先の業務や取り扱う商品を理解しているか」
が重要なのです。
例えば、保険会社のシステムを保守運用しているエンジニアであれば、
顧客先が取り扱う保険商品の仕組みや保険会社の業務を顧客先の社員よりも詳しくなれば、
かなり重宝され、単価も上がっていく傾向があります。
加えて、システムの償却が5年に設定されていることもわかる通り、一度システムを構築してしまえば、顧客先のシステムは頻繁に変わることがなく、使用される技術が長年固定化されます。同じ顧客先に常駐するのであればわざわざ新たな技術を学ぶ必要がありません。
そうなると常駐エンジニアは新たな商品販売や法令対応に適応するために顧客先の業務を理解することに時間を時間を割く傾向にあります。
しかしながら、顧客先側の都合で契約が解除されることがあります。そうなると、せっかく蓄積した知識が他の職場では活かせず、また新たな顧客先の業務内容を理解し直すといったリスクが生じます。
⑦給料が低い
これは所属する会社にもよるかと思いますが、客先常駐エンジニアは業務量の多さの割には給料が低い傾向にあります。
実際に客先常駐型のSEの平均年収は約250~400万円程度であり、システムエンジニア全体の平均(560万円)と比較すると低いです。
一次請け、二次請け、三次請け…と末端に行けば行くほど会社の売上は減りますので、給料もどんどん低くなる傾向があります。
私自身も一次請けのSIerにおりましたが、業務の大変さの割には給料が低いと感じながら仕事をしておりました。
客先常駐の全てが悪いわけではないが、オススメはしない
ここまでネガティブな部分を挙げていきましたが、客先常駐の全てを否定したいわけではありません。
例えば、
- 様々な会社の様子が見れる
- 人脈が増える
- 特定の業務知識に詳しくなる
などのメリットもあると思います。
しかし、客先常駐型のSEはキャリアアップのための転職や新卒という大事なカードを使ってまで目指すような場所かといわれると正直私はオススメしません。
エンジニアであればスタートアップなどもっと技術面を磨けて、綺麗なオフィスで働ける環境はあるでしょうし、サラリーマンとしてもより費用対効果のよい職種も存在しますので、より広い視野をもってキャリア形成してください。